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石仏■十三仏の教え

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本誓寺の仏像・石仏十三仏の教え

■十三仏について

 禅宗(臨済宗)ではお経に続いて「十方三世一切の諸仏、諸尊菩薩摩訶薩、摩訶般若波羅蜜」と回向を唱えます。十方は東西南北(四方)とその間および上下の空間をあらわし、三世は過去・現世・来世のことで、何時でも何処にでも如来、菩薩の仏さまが居られ、優れた智慧でお導きくださる主な仏さまが、十三仏であるとされています。

■十三仏信仰

 十三仏信仰では、ご先祖さまは十三の仏さまによってあの世に導かれると信じられています。死者がなくなってから49日間は「中陰」とも「中有」ともいいます。人間がこの世でおこなったあらゆる行いが総決算され、亡くなって後にうまれかわるところが決まる期間であるといいます。年回供養はその導く仏さまの変わられるときに法要が行われます。お葬式の後初7日に始まり、7日毎に忌があり、49日忌・1周忌・3回忌~33回忌までを年回法要といっています。このように、あの世で亡者であるご先祖が十三仏に導かれているところから、この世にある私たちも同じように十三仏の教えを学び、仏教の信仰生活を送るのが、追善供養であり、その信仰生活をご先祖さまに回向するのが年回法要となります。その十三仏のそれぞれの教えを学び実践することが十三仏信仰となります。

◆十三仏信仰 ・ 十三仏名号と忌日

十三仏信仰

<十三仏名号>    <忌 日>
①不動明王    初願忌(初七日忌)
②釈迦如来    総分忌(二七日忌)
③文殊菩薩    孝力忌(三七日忌)
④普賢菩薩    相当忌(四七日忌)
⑤地蔵菩薩    小練忌(五七日忌)
⑥彌勒菩薩    檀弘忌(六七日忌)
⑦薬師如来    大練忌(七七日忌)
⑧観音菩薩    卒哭忌(百日忌)
⑨勢至菩薩    小祥忌(一周忌)
⑩阿弥陀如来   大祥忌(三回忌)
⑪阿シュク如来  超祥忌(七回忌)
⑫大日如来    称名忌(13~27回忌)
⑬虚空蔵菩薩   冷照忌(33回忌)

◆十三仏 ①不動明王 (座高92cm・全高2.02m)

十三仏信仰

 初7日忌の仏さま、お不動さまはどうして背中に燃える炎を背負って、怒りの姿をして私達を威嚇しておられるのでしょうか。それは仏教に基本的な戒律があります。第1・不殺生戒(生き物をみだらに殺してはならない)、第2・不偸盗戒(他人の物を盗まない、欲しがらない)、第3・不邪淫戒(邪悪な心を起こしてはならない)、第4・不妄語戒(嘘偽りを言わない、他人を惑わしたり傷つけたりしない)、第5・不飲酒戒(お酒や麻薬に溺れてはならない)、この五つの戒は仏の世界のみならず、現世においても大変重要なことであります。不動明王は現世で守れなかった戒律を十三仏の第一番目に提示して、憤怒の形相で新たな心で仏の道を歩むように立ちはだかっておられます。また憤怒の姿は、現世における人々に、お互いを戒め、励まし合い、人としての道を正しく歩むように導いておられます。

◆十三仏 ②釈迦如来 (座高91cm・全高2.0m)

十三仏信仰

 二七日忌の仏さま、釈迦如来(お釈迦さま)は、歴史上実在され、仏教を開かれた大聖人です。今から2500年の昔、北インドのカピラ国(現ネパール)の王子として生まれられ29歳の時出家、35歳で悟りを開かれ、それから45年間法を説かれ80歳で入滅されました。その生涯で一切の衆生を救わんと五百の大願をたてられ、八万四千の法を説かれ、永遠不滅の法(真理)となっています。不動明王の導きで一切の罪を懺悔して、そのお釈迦さまの正しい法、真理の法をよりどころとして亡き人は仏の道の修行に入られます。七仏通戒偈という偈文に、諸悪莫作(もろもろの悪をなすなかれ)・衆善奉行(もろもろの善を奉行すべし)・自浄其意(自らその意を浄めよ)・是諸仏教(是れ諸仏の教えなり)と示されています。現世で身近な教えであり、一切の悪を断つ努力と、積極的に人のため世のために善事をなし、徳を積み心清らかな生活を念じておられます。

◆十三仏 ③文殊菩薩 (座高99cm・全高2.09m)

十三仏信仰

 三七日忌の仏さまは文殊菩薩さまです。お釈迦さまの弟子として実在された、文殊師利という人が、文殊菩薩であると言われています。この菩薩は,優れた善い知恵の持ち主として知られ、智と剣と、淨らかな経函をもって、いかなる世界にも応現して、人の過ちと苦しみを「こだわりなき心」に転換して救い摂ろうという誓いを持っています。こだわりのない心で見る山、川、草、木、花も鳥も、目に見える万象すべてをありのままに聞くという心のはたらきを「文殊の知恵」と言い、死者は仏智を授けられ、段々と功徳を積み蓮華台に進まれます。「般若経典」は仏の知恵と悟りの世界を説くとされ、普賢菩薩と一緒になって、常にお釈迦様の左に侍して、知恵を司り、文殊菩薩はこの経典とも結びつき、「三人寄れば文殊の知恵」ということわざも、この文殊菩薩の徳をたたえているといわれています。

◆十三仏  ④普賢菩薩 (座高99cm・全高2.09m)

十三仏信仰

 四七日忌の仏さまは普賢菩薩さまです。実践修行の普賢菩薩といわれます。「徳をつかさどる」菩薩として、仏の悟りに近づくために必要な、理・定・行の三つの功徳から数多くの全ての修行を実践されたと言われています。実践修行である「六波羅密」の菩薩行は、布施行(純粋な心で行う、施し・恵み・暖かい心・思いやりの心)持戒行(身・口・意の悪行を避ける)忍辱行(怒りに平静、友好的で他を許し、自ら忍ぶ)精進行(日夜怠ることのない修行)禅定行(精神を統一する、ひとつの対象に専から注ぐ)智慧行(一切を明確に見通す深く鋭い理知を養う)この修行の実践から普賢菩薩は、一切が平等に悟りの真理に包まれていることを表す仏と言われて、亡き人も、現世の人もお互いに全てを包んでこだわりなき心の平安と恵みを約束しています。

◆十三仏 ⑤地蔵菩薩 (座高93cm・全高2.03m)

十三仏信仰

  五七日忌の仏様は地蔵菩薩さまです。地蔵菩薩は観音菩薩と並び最も親しまれている菩薩です。お地蔵さんは「土」の仏さまです。第1に「土」は産み、育て守るということで、草木、全ての植物は種子を蒔いてこそ芽を出すことができ、芽を出すだけでなく、これを守り育てて成長させ、寿命を保たしめるのは「土」のお陰です。この土の持つ「産み育て守る」という働きをそのまま持っている仏さまがお地蔵さまになります。第2に土は不浄を浄めるという働きがあります。不浄な物を土の中に埋めると期間に差はありますが、ほとんどの物は浄化されてしまいます。この不浄を浄化する、人間の罪業、煩悩を全て洗い浄めてくれるのがお地蔵さまです。お地蔵さまは、千変万化に姿を変えて毎日六道を巡行して、衆生と共に苦を分かち合いつつ相携えて済度されるといわれています。

◆十三仏 ⑥彌勒菩薩 (座高98cm・全高2.08m) 

十三仏信仰

  六七日忌の仏さまは弥勒菩薩さまです。仏教信仰では、彌勒菩薩は未来仏とされ、お釈迦さん滅後56億7千万年たった時に仏になり、この世にあらわれ衆生を救済してくださると言われています。現世は慌ただしく、その慌ただしさに振り回されて、煩悩や過ちを繰り返してしまいます。現在菩薩の彌勒菩薩は、どうしたら衆生が救えるかと深く考えておられる姿です。その「うつつ心」は空虚な心ではなく、かたよらない、こだわらない、とらわれない無限の広さです。彌勒さまのこの世への下生は、気の遠くなるような未来生ですが、これは無限に広がる時間で滅びることのない生命の光明の仏さまです。このことは、一切の衆生を静寂の安らぎで包むという功徳を現しています。亡き人は、この静寂の中で彌勒菩薩に守られ、安住されています。

◆十三仏 ⑦薬師如来 (座高94cm 全高2.04m)

十三仏信仰

  満中院(49日忌)の仏さまは薬師如来さまです。西方の極楽浄土に対し、東方の「瑠璃光世界」の仏さまである薬師如来は、苦悩多きこの現世で暮らす人々の、心身両面における病や、煩悩、迷いという、沢山の病を癒して下さると信じられています。如来が衆生に利益なさるのは応病予薬といって、それぞれの病に応じて薬を与えてくださるのです。禅宗では食事をいただく時に、五観の偈「正に良薬を事とするは形枯を療ぜんがためなり」と唱えます。形枯は肉体のことで、食事は肉体を療養するための良薬としていただくもので、人間の健康のもとは、毎日の食事であり、正しい信心の生活であるとともに薬師如来のご守護のお陰だとさとり、報恩謝徳の生活に励むことを説いています。四十九日忌は満中陰といい、最も重用視され、その本尊さまが薬師如来さまです。

◆十三仏 ⑧観世音菩薩 (座高98cm 全高2.08m)

十三仏信仰

  百ヶ日の仏さまは観音菩薩さまです。観音菩薩は、人々の生きるこの世のことは自由自在にお見通しで、人々から救いを求められれば、それがどんな状態であっても対応出来るようにと、姿、形、持ち物、何でも用意して救いに来られると云われています。「衆生が諸々の苦悩を受ける時、観世音菩薩の名を一心に称えれば、観世音菩薩、即時にその音声を観じて、皆を解脱に導く」とあります。一心に読むお経の声が観音さまに届き、それが強ければ、強いほど受け止める観音さまの慈悲も深く、束縛から自由になり、転じて無心へと導かれると説かれています。「観音経」の中に「海潮音」という言葉が出てきます。海の潮の音は全てを包み込むほど大きな音です。小さな雑音は皆消えます、苦しい時観音さまを念じると観音さまと共鳴して、その声は海鳴りのように大きく広がり、全てを許し、包み込んでくれる大きな心に恵まれると説いています。

◆十三仏 ⑨勢至菩薩 (座高99cm 全高2.09m)

十三仏信仰

  1周忌の仏様は勢至菩薩さまです。阿弥陀如来の極楽浄土で、如来の脇侍として観音菩薩とともに従っています。勢至菩薩は智慧の威勢を表して、一切の衆生が此の菩薩を信ずれば無上の勢力を得て、人をして奮発努力せしめるという功徳を具え、開運発展を導いて下さると云われています。勢至菩薩を信ずることで、自身が智慧の光となって自らの煩悩を滅除し、無明の闇を照らしていき、誓願を立てて精進努力、無上力を尽くして初めて、安心幸福の生活が得られることを説いています。(精神とは、一時一処に全身全霊を込めて自利、利他の真を尽くすべし邁進すること)勢至菩薩は1周期の仏さまで一切を包む光明でわけ隔てなく包んで、亡き人に自然な安らぎと落ち着きを与えて下さいます。混迷の現代にあって、ややもすると挫折しそうになる心、勢至菩薩の御徳そのままに、無心に力強く、明るく生きていきたいものです。

◆十三仏 ⑩阿弥陀如来 (座高99cm 全高2.09m)

十三仏信仰

  阿弥陀如来は西方極楽浄土におられ、3回忌の仏さまとして「南無阿弥陀仏」と念仏すれば極楽往生まちがいなしとされる「浄土教」教主でもあります。そして阿弥陀仏は無限の寿命をもっておられ、また無限に広大な十方世界を照らしておられますから、無量寿無量光如来と呼ばれています。「座禅和讃」では「念仏懺悔修行等、その品多き諸善行、皆この中に帰するなり」それは迷いの此の岸から悟りの彼の岸に到着する道は、念仏もあれば懺悔の道もあり、修行もある。それぞれに善行であり、これらはすべての心の安心を得る道であると説かれています。また阿弥陀如来は甘露王といい、仏さまのお説教の声を現しています。悲しみ苦しみから、救いを求める人がいれば必ず心を慰めてくれる真実の言葉を聞かせて下さるのです。臨済宗の教えは、禅と念仏とは他力と自力に区別できないものであり、心の安心を得る道は同じで、一体のものであると説いています。

◆十三仏 ⑪阿しゅく如来 (座高92cm 全高2.02m)

十三仏信仰

  7回忌の仏さまは、阿しゅく如来さまです。左手で衣のすそをつまみ、右手は膝の上に置き、指先で大地を差しておられます。自身の衣を握っておられるのは、その決意の強さを表しておられ、右手指先で大地を差しておられるのは、大地の無人蔵の生命力をもって発心をゆるぎないものにしようとされているのです。亡き人は、この阿しゅく如来さまのお導きによって得られた仏の道、真実、真理の道を固く護持せんと、強い発心とゆるぎなき決意を得られるのです。現世において「心こそ心迷わす心なり」目先のものに、いつもふらふらと心がゆれ動かされると、自身を見失うことになります。衣のすそをしっかりと握りしめられる阿しゅく如来さまの姿を想いおこして発心をゆるぎないものにしたいものです。

◆十三仏 ⑫大日如来 (座高100cm 全高2.1m)

十三仏信仰

  13回忌~27回忌の仏様は大日如来さまです。大日如来は真言密教の教主で大日とは偉大な輝くものという意味があります。宇宙の実相は仏の姿で現した根本仏とされ、仏、菩薩の最高位にある仏さまです。またこの仏は悟りの智慧が完成して宇宙虚空に充満していることを現しています。独生、独死、独居、独来は1人で生まれ、1人で死に、1人で来り、1人で去る、と書きます。これは孤独という意味だけでなく、独は独立、独歩で他の何ものにも比べられない尊厳ある命を生き、死がきている意味と説いています。命の尊さは、太陽のように、大日如来のようにすべての人々にいき渡っています。その命を生き切ることが仏の智慧であり、亡き人の尊厳と心を、後に残った者に受け継いで行くことになります。真言ダラニは仏さまのお悟りとされ、この語義は秘密であり、あえて訳さないこととなっています。

◆十三仏 ⑬虚空蔵菩薩 (座高98cm 全高2.08m)

十三仏信仰

  虚空蔵菩薩さまは十三仏を初七日から、忌毎に導師頂く仏さまの最後の33回忌の仏さまです。虚空とは、カラッポという意味ではなく、無尽蔵であること、広いこと、大きいこと、限りないことを表しています。虚空蔵菩薩はそのように、広大無辺で無尽蔵の福徳と智慧をもつ菩薩とされ、一切世界は心の中にあるから、善も悪も、全ては「空」の悟りで包み込んでゆこうという仏です。この菩薩を信仰し、その名を唱える修行法に「未来持法」があり、記憶力が増し、頭が良くなると言われています。虚空は何物も破壊することが出来ずして、どんな物でも無数に受け入れて貯蔵することが出来、必要あればいつでも自由に出します。虚空蔵菩薩はあらゆる福徳を無尽蔵に包蔵して、大慈大悲の平等愛の心より悩み苦しむ者に虚空のごとき大きな、深い仏さまの宝庫を開いて福徳智慧の珍宝を施与されるのです。